海外出張のある仕事に憧れてる人は多いと思うんだけど、
少なくとも、半導体メーカーの海外出張はかなり稼げた。
今回は、俺が半導体メーカーに勤務した半年間の給与明細を惜しみなく公開していく。
海外出張のリアルな給料事情を知りたい人は、野次馬気分で見ていってほしい。
10月〜5月の給料明細を公開
10月(研修中)
- 額面:202,951円
- 手取り:161,482円
入社してすぐに熊本にある社員寮に入った。
この社員寮についてまとめた記事はこれ。
この社員寮には他の社員と共同で住んでたから、ストレスもあったんだけど、トータル的には大満足だった。
光熱費や水道代は使い放題で、家賃負担も月に5,000円ですんだからだ。
ど田舎の社員寮だったけど、家賃負担が月に5,000円はお得すぎる。
固定費が下がったので、貯金が貯まりに貯まった。
会社の研修では、まずは社会人の基礎的マナーから入って、後は電気とか工具の使い方を学んだ。
といっても、せいぜい中学〜高校レベルの内容だったし、ド文系の俺でも余裕だった。
その他に、俺が研修で学んだ内容はこんな感じ。
・「3Sを守りましょう」
➡︎製造業では必ず言われる定番ルールで、「整理」・「整頓」・「清掃」の頭文字「S」を取った言葉。
要は「職場環境はキレイに片付けとけよ」という意味。
製造業ではいろいろな工具を使うので、散らかしておくとすぐに事故につながるからこんなルールがあるわけだ。
机の上を散らかしておくと、抜き打ちでチェックしてくる3S信者の上司や先輩に怒られるので、製造業に入ったなら机の上はキレイにしておこう。
・「指差し呼称を徹底しましょう」
➡︎「指差し呼称」とは指を指して「ヨシ!」と確認する安全確認のための動作。
駅員が指を指して「ヨシ!」と言ってるのを見たことあると思うんだけど、あれと同じ。
たとえばネジを締めたら「ネジ締め、ヨシ!」と一個ずつ確認していくのがいいとされてるんだけど、こんなめんどくさいことやってるのは新人だけで、実際に現場で「ヨシ!」とか言ってる奴は見たことない。
研修では習うけど、実際に現場に入ったら全く使わない。それが指差し呼称。
他にもいろいろ学んだんだけど、
新しい知識を得ながら、給料がもらえるのはほんとにお得だ。
研修中は契約社員扱いで時給は1,400円だったけど、座学でボーッと研修を受けて、しかも新しい知識を学びながら時給1,400円もらえるとか天国。
手取りは16万円と、バイト並みの月給ではあったけど、じゅうぶん満足。
もし、これから異業種に転職するなら、研修期間の長い会社をえらぶべき。
11月(研修中)
- 額面:228,853円
- 手取り:193,986円
入社2ヶ月目も引き続き、研修期間だった。
ただしここから徐々に座学ではなくて、実際に半導体製造装置を工具を使っていじくってみるという実技が始まった。
元々、手先が不器用な俺はこの段階でちょっと怪しかった。
工具を使うのもネジを締めるのも遅いし、設計図を見てもうまく立体的にイメージできないという文系の素質をいかんなく発揮。
研修だからおおめに見てもらえてたけど、すでにこの時点で「この仕事に向いてない感」は出てた。
なんか嫌な予感はしてたんだけど、この後のアメリカ出張でやっぱり地獄を見ることになる。
12月(アメリカ出張へ)
- 額面:274,175円
- 手取り:229,942円
12月26日にアメリカ出張に出発。
この月にようやく手取りが20万円を超える。
12月前半は研修というよりアメリカ出張に向けた準備期間で、必要な工具をそろえたり、設計図を読み込んだりという時間だった。
会社から必要最低限の工具は支給されるんだけど、実際にはもっといろんな工具が必要で、それを買うのは自腹だし、領収書を提出しても経費で落ちないのは衝撃的だった。
仕事に必須の工具を買わないといけないのに、なんで自腹なんだよ。
その他にも、アメリカ渡航のためにESTAに申請したり、必要なスーツケースを買ったり、国際免許証を発行しに行ったりと、いろいろな準備をした。
ぶっちゃけこの月はすごく楽しくてアメリカ出張メンバーに選ばれたという優越感と、旅行前のドキドキ感で気持ちが高まっていた。
でも、その気持ちは押し殺さないといけなかった。
なぜなら、同僚や先輩に嫉妬されるからだ。
ふつうなら、新人はまずは日本国内に何度か出張してからはじめて海外出張に行けるものなんだけど、俺はいきなり海外出張、しかも当たりと言われているアメリカのポートランドに出張させてもらえた。
ちなみにハズレの国と社内で言われているのは、
- 韓国
➡︎反日感情がある人もおり、しかも現地の半導体メーカーの納期が厳しいらしい。
- 中国
➡︎隔離や監視が厳しく、入国するには専用のアプリを強制的にインストールさせられたりと、監視国家のめんどくささがあるらしい。あと、食事がまずい。
コロナ禍の隔離期間中は、出入り口に監視カメラが設置されており、窓もない独房みたいな施設に強制隔離されるらしい。どんな国なんだよ
逆に当たりの国は、
- アメリカ
➡︎コロナ禍でも隔離がゆるく(俺の時は隔離がなかった)観光地も多く、会社負担でレンタカーを借りれるので遠方に遊びに行きたい放題。
韓国や中国に出張に行っても周囲は「ふーん」という反応だけど、アメリカに出張に行ったと言うと「すごい!」という反応に変わるので、たぶん日本人はまだまだアメリカ様にコンプレックスがある。 - ドイツ、フランス、アイルランドなどのヨーロッパ
➡︎ヨーロッパに出張に行けるのは、限られたベテランメンバーだけで少数精鋭らしい。
物価は高いけど、その分会社からの手当ても多く、休日にヨーロッパを観光できるのは一生ものの体験になる。
ふつう、新人は日本国内の出張か、あるいは中国や韓国に出張に行かされるケースがほとんど。
新人がいきなりアメリカ出張に行けるのは異例だったらしい。
(たぶんTOEIC860を持ってるのが効いたんだと思う)
先輩からは「君がアメリカ出張に行くことは、できるだけ周囲に言わないように」と釘を刺されていた。
嫉妬対策もしないといけないなんて、社内政治はほんとにめんどくさい。
1月(アメリカ出張中)
- 額面:281,019円
- 手取り:236,236円
手取りはあいかわらず20万円を大きく超えてるけど、ここから地獄が始まる。
年末年始をアメリカで踊りながら過ごすというパリピ期間を経て、本格的に現地の半導体工場で働き始めた。
しかし、これが本当に地獄の3丁目で、たぶん人生でいちばんきつい時期の始まりだった。
きつかった理由は、こんな感じ。
- TOEIC860あっても、アメリカ人の英語についていけない。
- ド文系の俺には、設計図を読んだりなどの理系的な仕事に慣れなかった。
- 日本人同士のムラ社会的な狭い人間関係がストレス。
このへんの事情は、以下の記事に書いた。
アメリカという国は最高だったけど、仕事は最低だった。
2月(アメリカ出張中)
- 額面:352,502円
- 手取り:304,034円
アメリカ出張の真っ最中である2月は、日数が少ないにもかかわらず、ついに手取りが30万円を超えた。
ただ、これは昇給したとかそういうわけではなく、単に残業時間が増えたのと、夜勤が始まったせいでふつうの1,25倍の給料をもらえるようになったことが理由。
夜勤はほんとうにきつくて、夕方から工場に入って、朝日が昇ってる状態でホテルに帰って寝るという昼夜逆転生活はマジで寿命が縮んだ。
病みすぎて、ホテルに帰ってきた後はTwitterの140文字を読む元気さえなく、YouTubeで油粘土マンの動画を2、3本見て寝るというプライベートを過ごしていた。
観光に行く元気はまったくなかった。
アメリカにいる意味ない。
そんな中、アメリカで26歳の誕生日を迎えた俺が書いた記事はこれ。
ブログをやっててほんとによかった。
どんなに悩んでいても、悩みを言語化して整理して誰かに読んでもらえるのが嬉しい。
俺はブログに命を救われた。
3月(日本に帰国)
- 額面:278,422円
- 手取り:233,857円
3月5日にようやく日本に帰国できた。
懲役を終えて刑務所を出るような晴れやかな気持ちで帰国日を迎えた。
あれほど地獄の日々だったのに、いざ帰国日となると寂しい気分になるという不思議。
当時はまだコロナ禍だったので、熊本の社員寮に帰国した後、丸1週間は自宅にて隔離という名のニート期間を過ごすことができた。
もちろん隔離期間中も満額の給料が出る。
コロナ禍での海外出張は隔離期間中にお金をもらいながらニートできるので、お得だ。
社員寮での1週間の隔離期間が終わった後、会社に出社したんだけど、最初の2日くらいで海外出張の経費の精算などの事務作業が終わった後は、なにもやることがなくなった。
会社にいても定時まで自分の席で座ってるだけで何もすることがないので、在宅勤務の許可をもらって自宅でダラダラ過ごしていた。
社内パソコンを持って帰って自宅で在宅勤務をするんだけど、別に俺宛てにメールが来るわけでもないし、会議もないし、監視されてるわけでもないので、自宅でダラダラと過ごしたのが3月だった。
4月(退職 ほぼ有給消化)
- 額面:218,717円
- 手取り:207,581円
4月1日に「退職します」というメールを上長に送信。
アメリカから帰国してすぐに退職する意思は固めていたんだけど、なんで4月1日まで待ったかというと、
10日間の有給休暇が発生するのを待っていたからだ。
引き止められることもなくサクッと辞めることができたので、社員寮の荷物を実家に送り、4月5日ごろに奈良の実家に帰った。
4月は実際に勤務したのはわずか2日だけで残りは10日間の有給休暇だったけど、手取りは20万円もらえたので大満足。
有給休暇を消化せずに辞めてしまうのはもったいないので、有給休暇はぜったいに消化してから辞めるべきだ。
たとえどれほど迷惑だと言われようとも、有給休暇は労働者の権利なので、堂々と主張しよう。
5月
- 額面:483円
- 手取り:483円
5月はすでに正式に退職していたから、実家のポストに給料明細が入ってたのでビビった。
「前月調整」という名目で483円が振り込まれていたんだけど、これはたぶん所得税かなにかの還元があったということだろうか。謎。
前月までは当たり前のように20万円を超えていた手取りが、急に483円になったので、このへんがニートの焦りが生まれてくる時期。
給料明細には載らない「日当」がもらえる
実は、海外出張に行っている間は、給料明細には記載されていない「日当」というお金がもらえる。
半導体メーカーであれば、海外出張に行く場合、日数分の日当がもらえるはず。
俺の会社では「アメリカ滞在1日×約7,000円」だった。
ちなみに、韓国は1日5,000円、アイルランドは1日6,000円など、国によって日当は異なる。
たぶん、現地の物価や円安/円高によって日当の額が決まってるっぽい。
入国時の隔離期間や、土日などの休日も日当は支給される。
俺は、アメリカにちょうど70日ほど滞在したから、「7,000円×70日=約49万円」もの日当が支給された。
しかも、この日当は非課税だから、税金を引かれることはない。
49万円もの大金が、まるでおじいちゃんからもらうお年玉のように1円も引かれることなく支給されたわけだ。
この49万円の日当は給料明細には記載されてないけど非課税で振り込まれるので、むしろ大量の老人のせいで高額な社会保険料が引かれてしまう基本給より嬉しい収入だ。
慰労金10万円(コロナ禍限定)
俺がアメリカに出張したのは、2021年12月〜2022年3月にかけてだったけど、その時はまだアメリカでコロナが猛威をふるっていたので、10万円の慰労金がもらえた。
慰労金はあくまでコロナ禍限定でもらえるお金で、要は「コロナ禍で感染の危険のある中、海外出張に行ってくれてありがとう」的な意味合いの報酬だ。
だから、コロナ禍が終われば慰労金ももらえなくなるだろう。
ただし、慰労金は課税対象なので、実際にもらえたのは9万円程度だった。
稼いだお金は?【215万8,737円】
では、俺が半年間、半導体メーカーで働いて稼いだお金をまとめてみよう。
(半年の内3ヶ月はアメリカ出張)
- 基本給(手取り)10月〜5月:157万8,737円
- 日当(アメリカ出張70日分):49万円
- 慰労金:9万円
➡︎計:215万8,737円
半年で215万円も稼げたので、やはり半導体メーカーの海外出張は少なくとも収入面では悪くない。
1年働いていれば400万円近く稼げただろうし、俺みたいに未経験で入った新入社員でも同じ収入になる。
未経験から年収400万円は、なかなかの収入と言えるはずだ。
ちなみに、海外出張中は会社負担で無料で現地のホテルに泊まれるので、ホテルのポイントが貯まる。
俺はマリオットホテルのポイントが78,540ポイントもたまったので、それをAmazonギフト券3万円分に変換した。
会社負担のホテル代で貯まったポイントで、3万円のギフト券がもらえるのでお得でしかない。
他にもアメリカと日本の往復の飛行機(会社負担)でマイルも貯まった。
とにかく、海外出張はなんでもかんでも会社負担なので、無料でポイントばかりが貯まっていく。
このポイントも計算に入れれば、実質の年収はさらにもう少し上がる。
海外出張の給料はやはり、美味しいんだ。
ただし、肉体的につらい仕事だし、昇進して管理職にでもならない限りは大した昇給もないので、年をとってからこの仕事をやるのは肉体的にも収入的にもきついというのが本音。
出稼ぎ的な気分で、一時的にこの仕事をやる、というのがいいと思う。
ライフタイムでずっと続けられるような仕事ではない。
まあ、さすがに俺みたいに半年で辞めるのは早すぎるけど。
かかった諸経費
おまけとして、アメリカ出張にかかった経費をざっくり紹介しておこう。
ホテル代
Courtyard by Marriott Tacoma Downtownに1泊、TownePlace Suites Portland Hillsboroに63泊したので、合計の宿泊費は129万3,831円だった。
もちろん宿泊費は全額会社負担。
1泊2万円近い宿泊費がかかってて、円安のひどさとアメリカのインフレのすさまじさを実感する。
というか、どう考えても大した仕事ができてない俺に129万円の宿泊費を負担するのは、会社として大赤字だと思うんだけど、そこはあまり考えないようにしてる。
やはり、今お金が集まっている半導体メーカーだからお金に余裕があるんだろう。
零細企業が社員に軽々と海外出張に行かせられるはずがない。でも半導体メーカーならできる。
交通費
交通費は金額が一部省略されてるんだけど、羽田空港➡︎ポートランド国際空港まで、往復で20万円以上かかってる。
国内移動の交通費も含めると、海外出張でかかった交通費はトータル25万円ほどだろうか。
もちろん全額会社負担。
日本に帰国後は、社員寮の目の前までタクシーで帰れるのがよかった。
その他の経費
その他の経費としては以下の通り。
国際免許証の発行費用は当然支給されるとして、俺が驚いたのは、
アメリカにいる間の食事代も支給されることだ。
たしか1日5,000円が上限で、1日5,000円以内なら食べ放題だった。
(一応、「お菓子、炭酸飲料はダメ」というルールはあった)
ただ俺は外食しに行く元気はなかったので、いつもホテルでUber Eatsを頼んでた。
「1日5,000円も食費補助が出るなら余裕だろ」と思うかもしれないけど、アメリカのインフレはすさまじくてラーメン1杯がチップ込みで2,000円を超えてた。
日本なら1日5,000円もあれば高級料理も食えるけど、アメリカだとちょっと外食するだけですぐ5,000円を超えてしまうので実際は大した食事はできない。
やっぱ日本の食事環境は安くて美味いし最高なんだ。
【まとめ】海外出張は稼げる
もう一度まとめると、俺が半導体メーカーに半年勤務して稼げた金額はこうだ。
- 基本給(手取り)10月〜5月:157万8,737円
- 日当(アメリカ出張70日分):49万円
- 慰労金:9万円
➡︎計:215万8,737円
平均すると、月に35万円以上を稼いだことになる。
未経験から入社してこれだけの給料がもらえる仕事は、そう多くないと思う。
もちろん、夜勤やら人間関係のトラブルやら慣れない仕事で大変だったんだけど、後から振り返るとそれも人生の貴重な経験として一生飲み会で話せるネタになる。
全額会社負担で海外出張という貴重な経験をさせてもらえるんだから、俺はいい仕事だと思う。
長く続けるとすぐに身体にガタが来そうだけど「出稼ぎ」に行くくらいの軽い気持ちで、半導体メーカーに就職してみるのもアリだと思う。
Kindle本発売中
半導体メーカーに潜入し、3ヶ月のアメリカ出張に行った時の暴露話を書きました。
海外出張に興味のある人や、製造業で働いてみたい人は必読です。
超リアルでカッコ悪い潜入記&暴露本になっているので、ぜひどうぞ。