こんにちは、タロンです。
今回は、「自己責任」について考えます。
今の若い世代はみんな大人しいですよね。
でも僕は思います。みんな、「自己責任」が当たり前だと思っているから、大人しいのではないかと。
僕たちは、「社会が悪い」と思う前に「自分が悪い」と思ってしまうようになっているのです。
今回は、若者の精神をむしばむ「自己責任」の呪いに触れつつ、もっと「社会のせいにした方がいいよ」という話を書きます。
先に結論を言っておくと、こんな感じです。▼
・昔の世代は「社会が悪い」と思い、今の世代は「自分が悪い」と思ってしまう。
・覚えるべきなのは、「迷惑をかけるな」ではなく、「正しい迷惑のかけ方」
・「自分が悪い」と思う前に、もっと「社会のせい」にしよう。
では、くわしく解説していきますね。
1.「社会が悪い」と言って暴れた全共闘世代
実はちょっと昔には、「自分が悪い」と思う前に、「社会が悪い」と言って暴れる人たちがいました。
それが、「全共闘世代」です。
著名人でいうと、猪瀬直樹さん、上野千鶴子さん、テリー伊藤さんなどが全共闘世代だと言われます。
彼らが大学生だった1960年代は、学生闘争の時代でした。
今の僕たちの平和な感覚からすると信じられないですが、当時の大学生たちは機動隊に向かって火炎瓶を投げつけ、ゲバ棒(棒の形をした武器)で、機動隊をどつき回していたんです。
ここで重要なのは、
──ということです。
彼らの怒りの理由はいろいろあったのですが、一つは「これ以上、学費を値上げするな!」という理由です。
「学費が高いのは大学が悪い、そして政府も悪い」ということで、彼らは怒り、機動隊と激突し、お互いに殴り合っていたのです。
「自分が悪い」なんて考えはなかったとしか思えません。
これに対して、僕らの時代はどうでしょう?
僕らの時代では、学費が高かったとしても、「学費を払えない私が悪い」、「貧乏な家に生まれてしまった自分が悪い」というように、怒りは自分自身に向けられてしまいます。
もちろん、機動隊と激突するのがいいことだとは思いませんが、あまりにも自己責任の感覚が強い今の時代は危ないのではないでしょうか。
先ほど、全共闘世代の著名人として、猪瀬直樹さん、上野千鶴子さん、テリー伊藤さんを挙げましたが、この人たちは良くも悪くも自信満々で、「自分が悪い」みたいな自己責任の感覚はあんまり持っていないように見えます。
2.「社会が悪い」と言えない僕たち
・全共闘世代は、「自分が悪い」と思う前に「社会が悪い」と言って暴れた世代だった。
・今の僕たちは、「社会が悪い」と思う前に「自分が悪い」と思う世代になった。
きれいに逆転しちゃってますね。
全共闘世代が機動隊とケンカしていた時代は、たしかに物騒にしか見えません。
それに比べて、僕らの世代はぱっと見は大人しくなっているので、平和になったようにみえるかもしれません。
でも、実際には社会を攻撃するかわりに自分を攻撃してしまっているので、
実はこれは、データにも表れています。
平成29年版の犯罪白書によると、現代は少年犯罪が過去最低クラスに少なくなっています。▼
全共闘世代や、それよりもうちょっと後の世代は、今よりもよっぽど物騒で少年犯罪がたくさん起こっています。
(自分よりも社会が悪いと思うのですから、他人を攻撃する。その結果、逮捕されていたのです)
しかし、最近は少年犯罪は急激に減っています。
(社会よりも自分が悪いと思うのですから、他人を攻撃しない。だから、逮捕されないのです)
──と思うかもしれませんが、そうとも言い切れないのです。
なぜなら、少年犯罪が減っているのとは逆に、若者の自殺率はあまり減っていないからです。▼
全体の自殺率は減っていますが、15~34歳の若い世代で死因の第1位が自殺になっているのは、G7の先進国では日本のみだそうです。
「自己責任」の名の下に、他人を攻撃する代わりに自分を攻撃するようになったせいで、少年犯罪は減っているけど、若者の自殺率は増えているのが今の時代なのです。
僕らの世代は、昔の全共闘世代に比べて大人しいです。
若者が参加するデモは少ないですし、若者が政治運動を起こすことも少ない。
でも、それは平和になったわけではないと思います。
全共闘世代は「社会」と闘っていましたが、僕たちは「自分自身」と闘っているのです。
3.「社会が悪い」と開き直ってもいい
「自己責任」は政府にとっては都合がいいのかもしれません。
だって、受験や就職で失敗したとしても、ぜんぶ「自分のせい」にしてしまい、「社会が悪い」と言って、政府へのデモを起こしたりはしないからです。
僕がおすすめしたいのは、あなたが失敗したとしても、もう少し「社会のせい」にしてもいんじゃないかということです。
そもそも100%自分の責任なんてことは、ありえません。
あなたが受験や就職で失敗したときも、社会が悪い面だってあるはずです。
人生にミスって経済的にヤバくなったら、堂々と失業保険を使えばいいし、生活保護だって取ればいいのです。
──とここまで口に出して言うかどうかは個人のデリカシーの問題ですが、内心はこう思っていた方が精神衛生上はいいんじゃないかと思います。
おそらく、「失敗したのは自己責任」という呪いが強すぎて、その罪悪感から生活保護どころか、なんの公的援助にも頼らない人も中にはいるはずです。
でも、なんでもかんでも自己責任にしてしまうのは、ほんと、苦しいですよ。
どうしようもない失敗なんて、いくらでもあります。
そんな時は、「自分が悪い」と自己責任にするのではなく、「社会が悪い」と言って、公的な援助を堂々と受けた方がいいのです。
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ついでに言うと、僕は日本の学校教育で、「他人に迷惑をかけるな」という教育をするのは、ムダに自己責任論を助長させるのでよくないと思ってます。
教えるべきなのは、
無人島で一人で暮らすとかでない限り、他人に迷惑をかけずに生きていくのは不可能です。
なので、「迷惑をかけるな」ではなく、「正しい迷惑のかけかた」を覚える方が正しいのです。
自殺するのは「間違った迷惑のかけかた」であり、生活保護を取るのは「正しい迷惑のかけかた」です。
「他人に迷惑をかけるな」という日本の教育は、遠回しに「誰にも頼るな」と言ってしまっているのでどうもマズい気がしますね。
もしかしたら、全共闘世代が他人に迷惑をかけまくった世代なので、その反省という意味で、「他人に迷惑をかけるな」と教育するようになったのかもしれませんが、逆効果だと思いますね。
【まとめ】もっと「社会のせい」にしよう
では、この記事の結論はこうです。▼
・昔の世代は「社会が悪い」と思い、今の世代は「自分が悪い」と思ってしまう。
・覚えるべきなのは、「迷惑をかけるな」ではなく、「正しい迷惑のかけ方」
・「自分が悪い」と思う前に、もっと「社会のせい」にしよう。
僕も多くの若者と同じように、自己責任が当たり前だと思って生きてきてしまったので、いまだに社会に頼るのが下手くそです。
もちろん、自分一人で成功して生きていけるうちはいいですが、一度でも失敗して食えない状況になってしまうと、「自己責任論」のせいで家族にも友達にも公的援助にも頼れないということになってしまいます。
もっと気楽に社会に頼れる雰囲気を作るべきだと、僕は思います。
いつ、どんな理由でいきなりホームレスになるかなんてわからないですからね。
自分がいつでも社会的弱者になってしまうという、想像力は捨てないようにしたいものです。
以上! タロン(@shin_taron)でした。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!
参考文献
「自己責任」を知る上でのおすすめ文献をいくつか紹介しておきます。
「自己責任」の考え方を定着させた「ネオリベ改革」のカラクリについてよくわかります。
女性向けに書かれていますが、男性が読んでも勉強になります。
内容はかなりムズカシイのですが、難しい言葉が難しい言葉のまま通用していた最後の時代の空気感がわかります。
「成功者は謙虚でないといけない」という考え方には、きっと共感するはず。