就活といえば、朝井リョウの『何者』が必読書だ(俺調べ)。
俺もこの本、就活真っ最中に読んだせいで人間不信に拍車がかかったのでよく覚えている。
さて、今回は俺が就活をしていた頃を思い出して、
──これを振り返ってみようかなと。
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あれは、出版社の面接を手当たり次第に受けていた時だった。
「本が好き」というありふれた理由で出版社を受けまくっていたのだけど、かなり苦戦していた。
「出版社の就職は狭き門」であるのはまちがいない。
そんな中、唯一、最終面接まで到達したとある出版社があった。
人間とは不思議なもので、最終面接まで行ってしまうとかなり認められた気分で「すでに合格したも同じだ」と思ってしまっていた。
──そう思ってた。
本番の面接は、「俺一人 VS 会社役員(2人)」だった。
すでに勝者の余裕にひたっていた俺は、リラックスして質問に答えていた。
しかし、ある質問に、俺はフリーズしてしまった。
その質問とは、
「あなたを色に例えると、何色ですか?」
──という質問。
実は出版社の面接って、かなり変なことを聞かれることが多い。
・無人島に持っていくなら何を持っていくか?
・もし世界から急に人間が消えて、あなた一人になったらどうするか?
・もし恋人が不治の病に冒されたら、それでも付き合い続けるか?
──どれも答えるのに困る質問ばっかり。
出版社は「もし〜ならどうするか?」という仮定の質問をよく出してくる。
出版とは広く芸術に関わる職業分野なので、新卒の独創性をためしているのかもしれない。
「出版社といえば、変な質問ばかりしてくる」
その心構えでいた俺に投げかけられた質問は、まさかの、
「あなたを色に例えると、何色ですか?」
──という、就活の対策本にものっているような、定番の質問。
他の出版社では聞かれたこともない質問だったので、俺の脳みそは自転を停止し、完全にフリーズ。
「いかん、何か答えないとまずい……」
焦るあまり、こんな風に答えてしまいました。
「私を色に例えると、黒色だと思います」
「ほう、それはどうして?」
「私は今まで本を読んだり海外に行ったりして、自分なりの思想信条がある程度固まっているつもりです。
たとえ会社に入ろうとも、私の考えは何色にも染まらないという意味で黒色というわけです。
裁判官は、法廷では黒色の服を着ていますよね?
あれは、他人の干渉を受けず、自分の良心を貫き通すという意味で、他の色に染まりにくい黒色を着ているわけです。
私は他の考えには染まりたくありませんので、黒色でいたいです」
(面接官一同、苦笑い……)
なかなか生意気な答えだし、会社からすると扱いにくい人材であることを自ら告白しているようなものだけど、今も俺のこの考えは変わってなかったりする。
結局、この答えが悪かったのかどうかは答え合わせできないのでわからないけど、最終面接には落ちました。
「私を色に例えると、白色です。
御社の理念にいくらでも染まってみせます!」
──みたいに答えておくのがよかったのだろうか。
今でもあの最終面接の時のことを思い出すと、頭をかきむしりたくなるのだけど、過去のことなのでもうしゃあない。
出版社に入社できていたら、どういう人生になっていたのかは気になるけど。
ということで、これから出版社の面接を受ける人に伝えたいことは一つ。
気を抜いたらそこでジ・エンド。
出版社は今や売上がどんどん下がっているけど、それでも本に携わりたい人はきっとお金ではない動機を持っているはずなので、俺は応援しています。
がんばれ就活生。俺の屍を超えていけ。