12月といえば、年末調整の時期だ。
転職したことがある人なら知ってると思うけど、転職先には前職を退職する時にもらったはずの源泉徴収票を提出しないといけない。
(源泉徴収票のイメージがわかない人のためのリンク)
でも、とある日、こんなメールが来た。
まさか、このメールをきっかけに涙を流すことになるとは……。
社員の源泉徴収票をなくしてしまう会社
俺は10月に今の会社に入社したんだけど、入社式の日にしっかりと源泉徴収票の原本を提出した。
なのに、今月、会社からこんなメールが来た。
源泉徴収票に関してですが、只今管理部には〇〇さん(俺の名前)の令和4年度分の源泉徴収票がないため、お手数をおかけしますが、お手元にありましたらPDFを送付していただけますでしょうか。
以上、宜しくお願い致します。
会社の事務の人からのメール
そんなはずはない。
俺は確かに源泉徴収票を入社式で提出したはずだ。
会社にもそう伝えてみると、返信はこうだった。
源泉徴収票の再確認、ありがとうございます。
管理部では入社時に預かった書類を纏めて保管しておりますが、源泉徴収票はない状況です。
お手数をおかけして申し訳ありませんが、前職に源泉徴収票の再発行依頼をして頂き、管理部へ送付して頂く事は可能でしょうか。
会社の事務の人からのメール
そこまで言われると、「俺が入社式で源泉徴収票を提出した」という記憶は幻覚だったんだろうか。
でも俺は、退職する時や入社式など、重要なライフイベントの時は、
必ず録音するようにしている。
入社時に撮ったスマホの録音ファイルを聞き返してみると、
俺「これが、誓約書と……えっとこれが源泉徴収票ですね、提出いたします」
会社の人「はいはい」
やっぱり俺、ちゃんと提出してるやん
となると、やはり会社が社員から提出された源泉徴収票をなくしたことになる。
会社に「いや、俺の録音ファイルの24:53に源泉徴収票を提出したと思われる会話が録音されてるんですけど」と抗議しようと思ったけど、まだ入社して間もない今の段階で「録音してるめんどくさい社員」という悪印象をもたれるのは避けたい。
仕方ないので、こう返信することにした。
承知いたしました。
俺が送ったメール
前職に源泉徴収票の再発行を依頼できるかどうか確認してみます。
お手数をおかけしますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
むちゃくちゃめんどくさい。
確かに提出したはずなのに、何を紛失してくれとるんやこの会社はと思いながらも、そういえば、
俺には前職と連絡をとりたくない特殊な事情があるのを思い出した。
前の会社は円満退職できなかった
実は、俺は最近こんな暴露本を出版した。
Kindle本発売中
半導体メーカーに潜入し、3ヶ月のアメリカ出張に行った時の暴露話を書きました。
海外出張に興味のある人や、製造業で働いてみたい人は必読です。
超リアルでカッコ悪い潜入記&暴露本になっているので、ぜひどうぞ。
前職の半導体メーカーに勤務中に、アメリカ出張に行った時の暴露話を書いた本だ。
実はこの本、書いた俺が一番よくわかるんだけど、かなり会社の内部事情を暴露してしまっているアブナイ本なんだ。
そもそも前職では、次の出張先が韓国に決まっているにもかかわらず、急に辞めると言って辞めたので、
まったく円満退職できなかった
先輩方にはわりときつい言葉を投げられれたし、いろいろ精神的にきつかった。
そんなケンカ別れをした前職の会社に再度、「源泉徴収票を再発行してよドラえも〜ん」と泣きつかないといけないのだ。気まずすぎる。
大ゲンカして別れた元恋人に連絡を取るのってこんな気持ちなんだろうか。
前職とはもう一度連絡を取らないといけないことがあるので、できるだけ会社は円満退職したほうがいい。
LINEで前の会社に連絡をとってみる
さらに、今の会社からはこんな催促メールが来た。
令和4年度分の源泉徴収票についてその後、どんな状況でしょうか?
もし再発行待ちの状況でしたら恐れ入りますが、いつ頃送付できるかを教えて頂けますでしょうか。
会社の事務の人からのメール
いや、お前が源泉徴収票なくしたからこんなことになってるんやろがい。
とはいえ、キレていても仕方ないので、前の会社の上司に連絡を取ることにした。
前の会社の人事部の人のLINEの連絡先が残っていたので、この人に連絡をとることにする。
源泉徴収票を労働者に交付するのは会社の義務なんだけど、今回は源泉徴収票をなくしてしまった俺に非がある(なくしたのは俺じゃなくて今の会社だけど)。
もし前の会社に源泉徴収票の再発行を断られてしまったらどうしよう……。
しかも、前の会社とは円満退職できなかったのだから、なおさら俺の心証は悪い。最悪、LINEをしても無視されるかもしれない。
もし、前の会社の上司が俺の暴露本「半導体メーカー潜入記」を読んでたとしたら……。
会社のイメージを下げるような本を書いた憎たらしい俺に素直に応じるとも思えない。
ちなみに、前の会社に源泉徴収票の再発行を断られた場合は「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署に提出するといいらしい。
こうすれば、税務署が前の会社にプレッシャーをかけてくれる。
俺も断られてしまったら、最悪、この方法を使うつもりでいた。
「最悪、断られてもいいや」と、ダメ元で前の会社にLINEを送ってみることにした。
すると、わりと予想外のことにちゃんと返信が返ってきた。
現在はネットワークエンジニアとしてフルリモートで孤独な日々を送っている俺は、前の会社の上司からの温かい言葉に思わず涙ぐんでしまった。
その後、ちゃんと源泉徴収票をPDFで送ってもらえた。
しかも、最後は俺の体調を気遣う言葉まで。
どんだけできた人なんだ、この上司は。
思い出してみれば、俺が急に前職を辞めると言い出して同僚たちから総スカンを食らっていた状況で、笑顔で退職の手続きをしてくれて、社員寮から空港まで車で送ってくれたのもこの上司だった。
俺は会社が嫌いだけど、やはり人は嫌いになれない。泣けるぜ。
それにしても、いくら暴露本を書いたからと言って、たかだかKindle出版では大して読まれていないんだろうと感じた。
もし、俺が暴露本を書いたことを知っていてこの温かい対応をしてくれたのだとしたら、本当にこの人は聖人だ。
できればこの人には、俺の暴露本の存在を一生知らないでいてほしい。
ということで、データで送ってもらった源泉徴収票を今の会社に提出して一件落着した。
円満退職できなかった前の会社のイメージが上がり、源泉徴収票をなくしてしまう今の会社のイメージが下がる
━━という不思議な事件だった。
あと、読者のみなさんに覚えていてほしいのは、
源泉徴収票は意外となくしやすい(今回のケースのように会社がなくすケースもある)ので、源泉徴収票のコピーを必ずとっておこう。
源泉徴収票の原本をなくしたとしても、コピーさえとっていれば問題ないからだ。
源泉徴収票に限らず紙ベースの書類は紛失のリスクが高すぎるので、スマホの写真で撮ってPDF化するなり、コンビニのコピー機でデータ化するなど対策が必要だ。
それにしても、社員の源泉徴収票をなくしてしまう今の会社、大丈夫か?