大学生の時に看板屋でバイトしてたことがあったんだけど、
看板屋でバイトしたいと思ってる人はほぼいないと思うけど、興味のある人向けに書く。
看板屋のバイトは肉体労働
「看板屋」が正式名称なのかはわからないけど、他にも「看板専門店」、「看板制作専門店」みたいな呼び名もある。
要は、
バイトは看板を設置する作業を手伝うことになる。
仕事内容は、ほぼ肉体労働だ。
- 設置する看板を運ぶ
- 撤去する看板を運ぶ
- その他雑用
という感じで、単純な肉体労働がほとんどだ。
たまに、親方の代わりに釘を打ったり、メジャーで寸法を測ったりという作業もあるけど、ほとんどは単純作業。
体力さえあれば、誰にでもできる。
(看板は高いところに設置するので、高所を怖がらないガッツも必要)
一人親方の下でバイトした
俺の場合は、看板屋の一人親方と俺の2人だけで作業していた。
この50代の親方なる人物、元々は看板制作の会社に勤めていたらしく、何年かしてから独立して一人親方になったという苦労人だった。
この親方、なかなかにぶっ飛んだ人なんだけど、会社に属さず自分で会社を作ってる起業家だから、学ぶところが多かった。
会社といっても社員は一人もおらず、ほとんどの仕事を自分一人でこなしており、繁忙期の時には俺のようなバイトを臨時で雇うらしい。
つまり、この一人親方は
以下に、このフリーランス一人親方から学んだことを書いてみる。
一人親方のフリーランス術4つ
時給を上げないためにバイトを褒める
俺はこの看板屋のバイトを時給1,000円でやってたんだけど、高所での作業もあって怖いし、なにせ親方と俺の2人しかいないから仕事量は多い。
募集要項では、「2F以上の高さでの作業はありません!」と書いてあったはずなのに、ふつうにデパートの5Fの建物の側面にハシゴ車で登って作業をしたこともあったから、わりと怖かった。
当時の俺は、
と思ったので、時給UP交渉をしようと思ってた。
ところが、この親方、若者の気持ちをわかっているというか、若者にやりがいを与えるのが異常にうまかった。
事あるごとに、
と、明らかに褒めすぎなんだ。
どう考えても「作りものの演技」でしかないんだけど、社会人経験ゼロの当時の俺からすると、「おお、こんな俺を必要としてくれる人がいるんだ!」という気持ちになって舞い上がってしまった。
結果、時給1,000円という薄給にもかかわらず、割と楽しくバイトしてた。
でもこれはいわゆる「やりがい搾取」というやつで、バイトの時給を上げずに人件費を抑えるためのフリーランス流の戦略だったんだろう。
親方からすると、せっかく一通り仕事を教えたバイトに辞められると、また次のバイトを教育しないといけないから、コストがかかる。
だから、俺を辞めさせないために、
- 褒めまくってやりがいを与える。
- やりがいを与えれば低時給でも文句は言わない。
という戦術が実行されていた。
俺は完全にこの術中にハマって、やりがい搾取の標的になったまま飼い殺しの状態になっていた。
交渉は怒り狂う
この親方、撤去した看板を廃材買取業者みたいなところに売り飛ばしてたんだけど、その時の交渉が強気of強気で、見てて怖いくらいだった。
こういう場所にトラックの荷台に廃材を積んで持っていくと、「1kgあたり〇〇円」という相場で買い取ってくれる。
ところが、この業者がこんなことを言い出した。
(上の画像とは無関係の業者です)
「さっき、私たちがトラックの荷台から廃材をおろすのを手伝ったので、その分の手間賃を引かせていただきます」
この業者の言葉を聞いた親方は、怒り狂った。
勝手に手伝って手間賃を引くとは、なにごとや!
と、業者のホームグラウンドにもかかわらず、自分の城のようにブチギレ。
怯えた業者は、手間賃を引くことなく廃材の買取に応じてくれた。
交渉のテーブルにつく以上、強気の姿勢を崩すとナメられてしまう。
だから、虚勢でもハッタリでも強気に出るのは大事だ。
ただし、あまりにもキレすぎると出禁を喰らいそうだし、業者間のブラックリストに入れられてどこの業者も廃材を買い取ってくれなくなるから長期的にはヤバそうなんだけど、そんなことを気にする親方ではない。
成果物には妥協する
とある商店の看板を設置し終えた時、最後に水平器を看板の上に置いてみると、少し傾いていた。
と俺は絶望したんだけど、親方の一言はこうだった。
そうきたか。
フリーランスは成果物の完成度が命だと思ってたけど、成果物を妥協したっていいんだ。
Facebook創設者のマーク・ザッカーバーグも、
Done is better than perfect.(完璧を目指すよりまず終わらせろ)
と言ってたし、完璧なんて目指す必要はないんだ。
顧客が見てもわからないような些細な問題点など、気にしてもムダ。
完璧主義なんて目指さず、納期に間に合うように成果物を提出する。
これぞ、フリーランスの仕事術だ。
事故現場からは立ち去る
ある日、俺が親方と仕事をしていた時。
と思ったんだけど、よく話を聞いてみると、電柱をぶっ倒したのに警察に届け出ていないらしい。
なるほど、親方にかかれば、電柱の1本や2本、どうでもいいのだろう。
人様にケガをさせてなければ、警察には連絡しなくてOK。
それがフリーランス親方の論理。
【まとめ】フリーランスの仕事術
俺が看板屋の親方から学んだフリーランスの仕事術をまとめると、こうなる。
- ①バイトの人件費を上げないために、大げさに褒めまくってやりがい搾取する。
- ②交渉では怒り狂う。
- ③設置した看板がズレてても気にしない。
- ④事故現場からは立ち去る。
これからフリーランスになる人は、ぜひ親方の仕事術をぜひ参考にしてほしい。
取り扱い注意の仕事術ばっかりなので、実践するときは気をつけて。
親方の忘れられない一言
そんなフリーランス親方なんだけど、彼の言った忘れられない言葉があるんだ。
「絵を描きたくて看板屋になったけど、実際に看板屋になってみたら、書くのは文字ばかりや」
この言葉、なんとも人生の悲哀を感じてしまう。
親方は絵を描くのが好きだったらしく、「看板屋になれば、好きな絵をたくさん描ける!」と思ったんだろう。
でも実際には、街の看板を見ても分かる通り、看板に書かれているのは文字がほとんどで、絵は少ない。
多くの人が経験しているだろう、夢と現実のギャップを端的に表現しててすばらしい。
親方は今日も文字ばかりの看板を描きつづける。
それが、大人になるということだから。
でも、事故起こしたら警察には行ってください。
看板屋のバイトはおすすめしない
看板屋のバイトは特におすすめしない。
将来、看板屋として独立したいのでもない限り、看板屋で得たスキルが実社会で役に立つことは特にない。
もっと時給が高くて、スキルになるバイトは山ほどあるので、他を探してみよう。
あと、高所恐怖症の人は、看板屋のバイトは絶対にやめておこう。
俺の場合、4F以上の高さになるとマジで足がすくんで怖かったから。